道草記

思考の掃き溜め

DYNAMIC CHORD feat.Liar-S Append Disc についての雑記(千哉編)

あらすじと筆者のスタンスは下記リンク先の通りなので、特に真面目な(?)レビューを求めて来た読者には確認をお願いしたい。

 

yukumari.hatenadiary.jp

 

珠洲乃千哉ルートの概観および感想

 

本編要旨:

高校時代に芹に誘われバンドを組むことになった千哉は、慎也の紹介で出会ったヴォーカル、朔良の歌声こそが理想の声であると心を奪われた。それ以来、彼は朔良の歌声を響かせる曲を自分の手で作りたいという思いでS-leeperおよびLiar-Sの楽曲を全て作詞・作曲し、次第に作曲家としての道を志すようになった。

しかし、メジャーデビュー以降、「顔ばかりで演奏をまともに聴いてもらえないこと」、「デビュー曲『グッバイ サブウェイ』(アニメ非登場)以外の曲が聴いてもらえないこと」、そして「(これらが原因で)朔良が自分の作った曲を真剣に歌ってくれず、かつそんな状況を打破できるような曲を作ることができないこと」がストレスとなり、朔良の隣で演奏に本腰を入れることができなくなっていた。

芹の「友達」計画で自分に絡んでくる主人公に対して、当初は不信感と警戒心を抱き冷たく拒絶する。途方に暮れる主人公に対して宗太郎は、Liar-Sに入ったばかりの自分も慎也の脱退を受け止めきれない千哉から遠ざけられていたが、諦めず距離を縮めていこうと接するうちに心を開くようになったと語り、この励ましを受けて主人公も諦めず千哉との距離を縮めようとする。そして千哉も、2年前と同じように実直に自分たちの音楽と向き合い、自分たちの支えになりたいと嘘偽りなく言う彼女に次第に心を許し、共に過ごす時間を増やすようになる。そうするうちに、2人は互いのひたむきで素直なところ、誠実で努力家なところに惹かれ合うようになる。

そんなある日、Liar-Sと同じ収録現場に居合わせた人気歌手MERI(アニメ不参加)は、「Liar-Sが没落しても作曲家として生き残る道につながるだろうから、自分が歌う曲を作って欲しい」と千哉に持ち掛ける。純粋に音楽家としての力を付けたいという思いと社長からの勧めもあって千哉はこの仕事を引き受け、初めてLiar-S以外への作曲をすることになる。しかし、いざ作曲に取り掛かるとMERIのイメージを無視した「朔良のための曲」になってしまい、曲作りに行き詰ってしまう。そんな中、千哉との連絡が付かないことに心配した主人公は芹・宗太郎の後押しを受けて彼の家に行き、気分転換のためにと料理を振る舞う。緊張の解れた千哉は、主人公に「MERIのための曲について、一般人の視点で良いからアドバイスが欲しい」と持ち掛け、この仕事に関して悩み苦しんでいた感情を吐露する。これを受けて主人公は翌日、千哉のフラストレーションの原因である朔良の説得に向かい、対話の中で千哉への恋心を自覚する。その時、MERIの曲が完成したと言う千哉からの連絡を受けて、主人公は千哉の家に向かう。話すうちに互いの恋心を打ち明けようという雰囲気になるが、腹の虫によって告白は中断されてしまう。

後日、千哉はLiar-Sのための新曲を作り上げ、それを携えて朔良を説得しにかかる。諦めず真摯に自分に向かう千哉の態度に心動かされたのか、朔良も熱意を取り戻しLiar-Sはこの新曲に向けて真剣に取り掛かるようになる。

新曲発表に向けてLiar-Sの練習が熱を増していくある日の夜、千哉はこれまで支えてくれた主人公への感謝と共に、「これからは恋人として自分たちを見守って欲しい」と想いを告げる。それに応えて主人公も自分の恋心を伝え、晴れて2人は恋人同士となる。初めてのキスを交わした後、「本当はこのまま帰したくないが、一線を越えてしまわないように家まで送る」という千哉に対して、主人公は「帰さないで欲しい」と夜を共にすることを決める。そしてその夜、2人は初夜を迎える。

こうしてLiar-Sの新曲「RISE’n SHINE」(5話のバッタが飛ぶ曲)は無事夏フェスで発表され、「デビュー曲とルックスが売りのバンド」という評価を打ち崩す成功を収めた。

 

選択肢を一定以上ミスると青字部分で朔良の拒絶に根負けして身を引き、千哉自身は作曲家として成功する一方でLiar-Sは解散する。乙女ゲーの選択肢って結構がっついていかないとダメなんだなあ、と何度もBADを踏みながら思った。

 

総じて、非常に健全というか当たり障りのない話だった。Liar-Sの問題と向き合うというよりは「千哉個人を支える」という色が強いため、他のルートと比べると淡泊というか全体のストーリー的には物足りない、というのが正直な感想である。千哉の悩みの根源は朔良にある以上千哉自身をカウンセリングする必要は薄いし、プレイ中に「そこまでわかったんならひとまずウクレレくんはほっといてドヤ飯のカウンセリングに行けよ!」と何度頭を抱えたことか。中でも、低迷の根源にある朔良が熱意を取り戻した理由がこのルートでは不明瞭(主人公登場以前にも新曲を作ってはいたがうまくいかなかったのに、なぜこの曲が朔良を変えたのかがMERIの1件を加味するにしても描写不足。また、演奏態度について千哉が説得を試みてもけんもほろろで諦めたという状況だったのに、朔良の悩みに触れないまま「千哉の不屈の精神」ましてや「主人公の千哉への恋心」が朔良を動かしたとは考えにくい)なのが一番の消化不足ポイントだった。まあそれは朔良ルートでどうぞということなんだろうが、新曲を作るまでの間に千哉が(あるいは千哉と主人公の2人が結託して)朔良の本心を聞き出しに行くという場面があっても良かったんじゃないかと思う。

また、千哉(と主人公)の成長という面から言うと、彼の口からは「諦めない粘り強さ」が強調されていたが、個人的には「他者との心を開いた交流を避け(恋愛経験無し)、また作曲に対するプライドからLiar-S外の他者の口出しを受け付けなかった千哉が、率直に言葉をぶつける主人公との出会いによって自分の弱みも含めて心のうちを明かせる存在(=主人公)を得、作曲についても素直に他者の意見に耳を傾けるようになった(MERIの件でアドバイスを求めた相手である主人公は、音楽に関して専門的な知識を持っていない)」という点をもっと押し出した方が「嘘」をテーマにしているであろう本作にはそぐうのではないかと思った。諦めないだけなら松岡修造でもいいわけだし。他キャラの「嘘」はかなり前面に出されている一方で、彼の「嘘」(恐らく「他者を頼りたいのにプライドから拒絶してしまう」というところだろうか)についてはぼやけた感じになってしまっているように感じる。まあそれは察しろという美学なのかもしれないが……

※後日追記:公式の紹介によれば彼にとっての「嘘」は「諦め」らしい。曲解しすぎたなあ。

と、「Liar-Sの再生物語」という観点からすればストーリーには不満なのだが、その分純粋に千哉自身の魅力に浸れるストーリーだったとしゅがぱにCDで不覚にも彼に心を奪われてしまった身としては思う。序盤こそ猛烈な勢いで拒絶してくるが、心を開いてからは聖人三勇士の称号は伊達じゃないと言わんばかりに初心な可愛さを見せつつ律儀に心優しく接してくれる。しかし2年前の記憶もあるとはいえクッキー一袋で懐柔され、テンプレのような服の好みをしてるあたりチョロイン感がある。かわいい。

同衾するという描写はありつつも他の攻略キャラに比べて格段に肌色成分が少なく(比較対象がおかしいだけとも言う)愛情表現が清楚なので、「ゲームとは言え男にガツガツ欲情されるのはちょっと……」という(主に)男性ダイナーファンにも入門あるいは清涼剤としてお勧めのシナリオと言える。多分。宗太郎もどちらかと言えば癒し枠だろうが、彼のストーリーは他ルートを攻略した後でこそ真価を発揮すると思うので、こだわりが無ければ後回しにすることを勧める。

なおBADを回避すると、以降の選択肢で新曲発表後のシーンが2通りに分岐する。エンディング①では夏フェスから暫く経って、主人公の新妻のような宣言に感極まって路地裏でキス、②では夏フェスの演奏終了後に(千哉を)苗字ではなく名前で呼んで欲しいとキャッキャウフフする話である。まるで少女漫画だな。

 

そして以下、おまけシナリオの簡単な紹介。

スペシャルシナリオ(love U kiss...)では「きちんと主人公の両親に挨拶がしたい」と菓子折り引っ提げて家にやって来て、結婚するかの勢いで父親を説得しにかかる。聖人やんけ。

アンコールシナリオでは自分たちのイチャイチャはそっちのけでMERIと加賀マネをくっつけようとする2人が見られる。エンド①のベッドでキャッキャウフフする図がどう見ても百合です本当にありがとうございました。お互いMERIにヤキモチ焼くしエンド②ではMERIを攻略できるしこんな百合、他√じゃ見れない!

 

思いの丈を語ると本稿趣旨から大幅に外れるので控えめに主張するが、かわいいし真面目な良い子だし下半身も慎まやか(しないとは言ってない)だしちーちゃんはいいぞ。